2002/3/26(Tue)
音楽機材は持たぬ旅と公言したものの、実はポケットにブルースハープをしのばせていた。邪魔にもならないし、興に乗れば同行者たちに即興演奏でも聴かせてやろうという企みもあった。しかしいざハーモニカを携えて夕暮れのベランダで想うのは、半世紀以上前にこの地で繰り広げられた惨劇のことばかり。実は母方の祖父が南海の孤島で戦死し、その遺骨はこの海のどこかに沈んでいるのだ。
僕は即興でファンファーレを作り、祖父やその戦友たちの眠る静かな海に向かってブルースハープの音色を奏でた。おじいちゃん、孫からのプレゼントです。
小谷隆