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<< 人生の縮図 >>


2003/9/17(Wed)

 老紳士の本通夜に列席した。地獄に引きずりこむような坊主の読経で眠気を誘われることのない友人葬なる形式で、通夜ながら清々しい気持ちにさえなった。最後のご尊顔は何とも優しく柔らかな表情だった。半眼半口、艶さえたたえたその顔は屍のそれではない。成仏の相とはああいうのを言うのだろうか。
 翻って、白昼のビルで罪なき人をも巻き込んで爆死した男の形相はどんなものだったろうか。彼岸に閻魔なる裁きの人がおわしますとしたらいま彼は間違いなくその厳しい責めに悶え苦しんでいることだろう。涅槃の相は人生の縮図である。


小谷隆


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